骨盤が歪むとなぜ腰が痛むか?
作成日 2015年11月05日(木曜)17:16
骨盤が歪むとなぜ腰が痛くなるか?
最近ではすっかりメジャーになった骨盤ですが、一昔前までは不動関節(動かない関節)と言われて
いたことをご存じでしょうか?関節なのに動かないというのもおかしな話ですが、
そういわれてもおかしくないくらいこの関節の動きは小さいものです。
本稿では「前屈」身体を前に屈めるときの動きを例に挙げて骨盤と腰痛の関係を解説いたします。
前に屈むと腰が痛む
腰痛の中でもかなり訴える方が多い愁訴です。屈むという行為自体が腰に大きな負担をかける姿勢なので、
多様な原因からこの症状は生まれます。従って
前屈すると腰が痛い=原因はこれ、といった短絡的な話にはなりませんが、
屈んだときに痛みがでるか否かで施術前後の差を体感することができるため、
検査として使われることも多いです。腰痛に長年お悩みで、様々な治療を行ってきた方は
おそらく大半の治療院で「前屈して痛いかどうか?」を聞かれた経験があると思います。
痛みの原因の前に、この「前屈」という動きそのものの解説からしていきたいと思います。
前屈とは腰の骨と股関節の複合運動である
皆様が何気なく行う前屈とは、腰椎椎間関節、つまりは腰の骨と股関節からある複合運動です。
上の画像を見てみてください。三種類の前屈の姿勢があります。
文字が少々読みづらいですが、
一番左のAが正常の前屈、
真ん中のBが股関節、骨盤が動かない状態での前屈ですね。
身体の硬い方、腰の悪い方はかなりの割合でこの状態になっています。
正常の状態に比べて腰の部分が丸くなってしまっているのがわかります。
一番右のCが腰椎を固定させて股関節のみ、骨盤の傾きのみで前屈している
状態です。無意識でこういう前屈をする方はほとんどいません。
この状態で膝を曲げて前屈するのが、腰に最も負担のかからない前屈になります。
介護職の方や力仕事の方等はみな、重いものを持つときはそういう姿勢をとります。
逆にぎっくり腰を起こす時の大半はBの骨盤が固定された状態での動きが引き金と
なっています。
簡単に体感する方法があります。
①普通に前屈してみる
何も意識せずに普通に前屈してみてください。その時に
a.脚の後ろ側の筋肉の伸び方
b.腰回りの負担の感覚
をなんとなくでいいので覚えておいてくださいね。
②次にお腹を前に突出すように上半身を伸ばした状態で
お尻を後ろに突き出すような形で前屈してみてください。
・・・当然ながら先ほどよりも角度は行かないですよね?
そして脚の後ろ側の筋肉の伸びは先ほどより強く、
逆に腰回りの負担は先ほどより少ないことは感じられましたでしょうか?
この動きが、股関節のみを使った前屈 になります。
③今度は壁を背にして、かかとを壁から5cmほど離し、軽く壁にもたれかかった状態で、
前屈をしてみてください。
・・・どうでしょうか。②より更に可動域が狭いはずです。
腰の悪い方ならばこれだけで腰に不快感を感じるはずです。
この動きが 腰椎をつかった前屈 になります。
②の股関節と③の腰椎を同時に行う動きが①の通常行われる前屈ということになります。
②の股関節は肩関節と並んで人体で最も可動域の広い関節です。
逆に③の腰椎は関節自体も小さく、また内部には脊髄が前身となる馬尾神経が通過しているため
本来大きく動く部位ではありません。
故に前屈とは可動域の大きい関節と小さい関節の複合運動となるわけですね。
間を取り持つ骨盤の存在
デリケートな腰椎は、横でダイナミックな股関節が動くだけでも負担となってしまいます。
しかし人体にはそれを緩衝する仕組みがあります。それが骨盤の関節
仙腸関節です。
仙腸関節は一昔前までは不動関節(動かない関節)と言われていた部分でした。
現在ではわずかに動くことが確認されていますが、その可動域は先に出た腰椎よりも
更に小さいもので、丁度ネジが緩んだ椅子がカタカタと揺れるような、そんな動きをします。
実はこの動きこそが緩衝剤の役割を果たし、腰椎を守っているのです。
大きく動く股関節、その動きの衝撃を仙腸関節が吸収、残りの僅かな動作を腰椎が行う、
といった関係性ですね。
しかし、いわゆる骨盤の歪みによりこの緩衝剤の機能が失われてしまうと
一気に腰椎への負担は増大します。先ほど仙腸関節を「ネジの緩んだ椅子」という表現をしましたが、
骨盤が歪むとこの緩みが無くなり「ネジが閉まった状態」となります。
椅子ならばそのほうが安定するのですが、仙腸関節は緩んでいることによって緩衝剤の役目を
果たしています。締め付けられるとその効力を失います。
結果、股関節の大きな動きの力は緩衝されず、腰椎を直撃し、段々とダメージが蓄積され
最終的には腰椎椎間板損傷などにつながっていくというわけです。
仙腸関節が歪むことにより姿勢が変化が悪くなり、腰に負担をかける・・
とはよく言われていることですし、勿論そういった機序での腰痛もたくさんあります。
が、もうひとつ、「動きの中での機能不全」といった部分も大切なものです。
スポーツの最中で身体が痛む、あるいは、椅子から立ち上がる、寝返りをうつ、朝起きるときに痛む、
といった動きの中で出てくる痛みには、こういった理論があるのです。
当院ではスタティック(静的状態)よりもむしろモーション(動的)
動いている時の機能の低下の改善を重要視しています。
動かない部分を動くように改善し、
動きすぎの部分の負荷を減らす。
それによって腰痛治療では大きな成果を挙げております。